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No. 066 update 2004.05.01 PDF版(115.1 kbyte)
今回は，｢電池｣のリサイクルについて考えてみたいと思います． ｢電池｣には実に沢山の種類があります．使い捨てタイプの電池（一次電池と呼んでいます）としては，マンガン乾電池，アルカリ乾電池，アルカリボタン電池，リチウム電池等があります．また，充電して何度も使用するタイプの電池（二次電池と呼んでいます）としては，ニカド電池，ニッケル水素電池，リチウムイオン二次電池，鉛蓄電池等があります． これらの中で二次電池は，電器店，時計店，カメラ店などに設置されている電池回収箱での回収対象となっています．一方，マンガン電池，アルカリ電池，リチウム電池等のいわゆる一次電池は一般廃棄物として処分されています．電池工業会のホームページによると２００３年の電池の生産本数は以下のとおりです． 個数（単位：億個）マンガン電池 9.7アルカリマンガン電池 14.4酸化銀電池 10.0リチウム電池 11.4他の一次電池 0.7------------------------------一次電池の合計 46.2鉛蓄電池 0.4アルカリ蓄電池 3.9ニッケル水素電池 3.8リチウムイオン電池 7.6------------------------------二次電池の合計 15.7合計 61.9(出典：電池工業会 http://www.baj.or.jp/total/index.html) すなわち，国内で多数利用されている電池の半分以上は使い捨て型の一次電池で，その流通量は重量ベースでは年間約７万トン（電池工業会の推計）となっています．これらの乾電池の中でかつてアルカリ乾電池には無機水銀が含まれていたため，１９８５年に厚生省（当時）は乾電池の広域回収処理の実施を決定し，１９８６年に社団法人全国都市清掃会議（以下，全都清）が「使用済乾電池の広域回収・処理計画」を策定，野村興産イトムカ鉱業所を処理センターに指定しました． イトムカ鉱業所は全国約１９００の自治体から年間約１万トンを回収し，リサイクル事業を展開しています．また，東邦亜鉛株式会社でも乾電池のリサイクル事業を始めています．これらの数値から日本における乾電池のリサイクル率は１５％程度に留まっていることがわかります． 一方，海外に目を向けるとスイスでの乾電池リサイクル率は約６０％と報告されており，日本でのリサイクル率向上が大きな課題となっています． ちなみに上記の差となる６万トンの乾電池はどこへ？という疑問が湧きます．これらは廃棄物処分場で埋立処分されていると考えることができます． 例えば仙台市のケースについて以前調べたことがあります． 平成１３年度の仙台市における乾電池の回収量は約３５０トンで，単３電池換算では約１，４００万本に相当します．これらの収集乾電池はイトムカ鉱業所で処理されますが，この処理費用（運搬，処理，管理費）は約３，４３０万円となっています．すなわち，単３乾電池１本当りに換算すると２．５円の費用を要したことになります． 本来，乾電池を含めたリサイクルシステムが電池メーカーから提示されても良いように思いますが，乾電池はリサイクル対象とはなっていません． これは，電池のリサイクルが，�ヾ超�に対して健全で，�∋餮擦虜突�用が有効に実施でき，��その利点がコストに釣り合うことが条件となっているためです．メーカー側はこのような論拠を踏まえ，乾電池については｢リサイクル｣対象とはせずに，埋立て実験等による安全性の確認が行われ，埋立て処理の妥当性を主張しています． 乾電池リサイクルの最大のネックはコスト的に釣り合わないことが直接の原因と推定されますが，メーカー側がリサイクル対象としていない乾電池の一部を自治体が回収して，リサイクルしている実態は今一つ整合性に欠けているようにも思えます． 電池のリサイクル一つを見ても，現状を正確に理解することは容易ではありません．｢リサイクル｣することが必ずしも環境負荷を軽減する訳でもありません．確かに「リサイクル」が経済的に成り立つことは，｢リサイクル｣により有用な資源が回収できていることを意味しており，ある意味で妥当な判断基準とも言えます． しかし，より本質的には使い捨ての｢乾電池｣の利用をできるだけ削減し，｢二次電池｣の使用を心がけることも解決策の一つとして有効と考えます．
[文責：スリー・アール 菅井弘]
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