今回は,「アルミ缶」のリサイクルについて考えてみたいと思います. アルミ缶は飲料容器として馴染みの深い容器です.代表的な飲料容器はアルミ缶,PETボトル,スチール缶およびガラスびんの4種類です.これら4種類の飲料容器の生産量,再資源化量,再資源化率を整理すると以下のようになっています.アルミ缶の消費量,回収量,回収率(単位:億缶) 1993 1996 1998 2000 2001 2002 消費量 117.8 163.9 166.5 167.5 174.4 177.8 回収量 68.0 115.0 123.9 135.0 144.3 147.2 回収率(%) 57.8 70.2 74.4 80.6 82.8 83.1 ペットボトルの生産量,再資源化量,再資源化率(単位:トン) 1993 1996 1998 2000 2001 2002 生産量 123,798 172,902 281,927 361,944 402,427 412,565 再資源化量 528 5,094 47,620 124,873 161,651 188,194 再資源化率(%) 0.4 2.9 16.9 34.5 40.1 45.6 スチール缶の生産量,再資源化量,再資源化率(単位:トン) 1993 1996 1998 2000 2001 2002 生産量 1,359,741 1,422,420 1,284,546 1,215,357 1,055,000 949,000 再資源化量 829,010 1,100,220 1,059,572 1,022,800 899,000 817,000 再資源化率(%) 61 77.3 79.6 84.2 85.2 86.1 ガラスびんの生産量,カレット使用量,カレット利用率(単位:万トン) 1993 1996 1998 2000 2001 2002 生産量 235.1 221.0 197.5 182.0 173.8 168.9 カレット使用量 130.5 143.6 145.9 141.6 142.5 140.8 カレット利用率 55.5 65.0 73.9 77.8 82.0 83.3 (出典:食品容器環境美化ホームページ http://www.kankyobika.or.jp/recicl/recicl_2.html) リサイクルという観点からはペットボトル以外はリサイクル率80%以上で非常に良い実績と言うことができます.ところで,金属容器としてはアルミ缶とスチール缶の2種類がありますが,どのように使い分けられているのかは私自身,ほとんど理解していませんでした. そこで,少し調べてみたところ,以下のホームページ『科学的雑学のすすめ』http://scientific-browser.hp.infoseek.co.jp/zatugaku/28_can.htmlにわかり易い説明が記載されていました.『2種類の缶は材質だけでなく構造も異なっています.スチール缶は3ピース構造と言って,胴体・上ブタ・下ブタがそれぞれ別々になっています.一方,アルミ缶は2ピース構造で胴体と底が一続きになっていて,上ブタが別に取り付けられています. さて,果汁やコーヒー,お茶などは高温で熱して殺菌した後に缶に入れられ,中の空気を抜かれて封をされます.このとき,缶の中の空気が減り,気圧が下がるために外圧がかかります.そこで,外圧に強い堅いスチール缶が使われます. また,炭酸を含むコーラやビールは,炭酸が缶の中で気化するため,内圧がかかります.そこで膨らんでも大丈夫な柔らかいアルミ缶が使われます.アルミ缶の底はドーム状にへこんでいますが,これは内圧に対応するためです.』 以上の説明を踏まえて,飲料缶の用途別・素材別内訳を見ると,なるほどという感じです.何となく,炭酸系飲料は内圧が高いイメージで丈夫なスチール缶を使っても良さそうに感じていましたが,アルミ缶が使われるにはそれなりの理由があるのだ,ということを改めて知りました.飲料缶の用途別・素材別内訳 数量(億缶) スチール缶 アルミ缶炭酸飲料 29.1 32% 68%果実飲料 24.8 75% 25%スポーツ飲料 13.9 29% 71% 茶系飲料 33.7 81% 19%紅茶飲料 14.5 100% -コーヒー飲料 101.8 99% 1% その他飲料 12.0 77% 23%清涼飲料合計 229.8 80% 20%ビールその他酒類 119.6 - 100%総合 394.4 52% 48%(出典:http://www.steelcan.jp/knowledge/drink.html) ちなみに先述のとおりスチール缶では,フタの部分がアルミでできています.しかし,リサイクル時にはアルミニウムと鉄では鉄の方が比重が重いため,溶解すると鉄は自然と下の方へ沈みアルミ酸化物が分離することが可能でありそれほど大きな問題ではないようです.次に比較のため世界におけるアルミ缶のリサイクルデータを以下に示します.世界各国のアルミ缶リサイクル率(2002年) アルミ缶 消費量百万缶 アルミ缶比率% リサイクル率% イギリス 5,925 73 42 イタリア 1,730 96 50 スペイン 2,350 39 25 ギリシャ 1,010 100 36 トルコ 800 78 50 スウェーデン 930 100 86 フランス 730 27 30 ドイツ 960 13 78 ベネルクス3国 510 24 80 オーストリア 650 93 50 ポルトガル 185 40 27 アイルランド 265 78 28 スイス 240 100 91 フィンランド 100 100 85 ノルウェー・アイスランド 255 100 91 西ヨーロッパ計 16,010 49.8 46 ポーランド 2,050 98 41 その他東中欧 5,070 96 n.a. ヨーロッパ総計 23,130 58.5 n.a. アメリカ合衆国 100,500 100 53 日本 17,780 52 83.1 (出典:http://www.alumi-can.or.jp/F/f00d.htm) アルミ缶比率は飲料缶に占めるアルミ缶の比率を意味します.世界全体でみると,ヨーロッパ全体で約230億缶,日本は約180億缶,米国は1,000億缶のアルミ缶が使用されています. 日本のリサイクル率は約83%でかなり高い値を達成していますが,消費量の観点からは日本だけでヨーロッパ全体と肩を並べることができるほどの「消費大国」です.ただし,米国はさらに大量のアルミ缶の消費大国なので日本の消費量もあまり目だってはいません. アルミ缶は,リサイクルの観点からは優等生であることは間違いありません.近い将来はリサイクル率も90%を超え,100%近くなることも夢ではありません.一方で,日本全体としての消費量はより削減する努力が必要と考えます.****************************************************メルマガ第68号の記事に関して 複数の読者の方から『蛍光灯・電球・発光ダイオード(LED)の中で,三つのうちどれが一番トータルのエネルギー消費(製造から製品の使用,廃棄までに伴う環境負荷)が少なく,環境に優しいものと言えるのでしょうか?』という趣旨のご質問をいただきました.電球型蛍光灯 白熱灯の1/4〜1/5の消費電力で同じ明るさLED照明 現在の蛍光灯と比較して消費電力が1/2(出典:http://www.eic.or.jp/qa/?act=view&serial=2821) LED照明は消費電力が同じ明るさの電球の約1/10,蛍光灯の約1/2ということになります.前回のメルマガ記事では,『実際に両者を比べると,「蛍光灯」の方が「白熱電球」より明るく感じるといわれています.しかし照度では差はありません.』と不正確な表現がありましたことお詫び申し上げます. ただし,上記データは消費電力に限った話で,実際に蛍光灯等自体や照明器具本体の製造,廃棄までを含めるとより慎重な検討が必要と考えます. 寿命の尽きた機器を更新する際には確かにより省エネ特性に優れた製品を優先することに異論はありませんが,まだ使えるのに何とか買い替え需要を増加させるような雰囲気があります.産業界ばかりでなく,政府政策面でも後押ししたりしています. 自動車などその典型で,「安全」や「環境」を強調し,ユーザーが長く使用することを何かと邪魔している局面も多々見かけます.省エネ製品の導入も大切ですが,一方で製品を長く使うことを認める社会も同様に大切と考えます.例え燃費が多少悪くても,10年,20年と長く使い続けることは決して悪いことではない,と感じています. |