今回は「風力発電を取巻く動向」について考えてみたいと思います. 世界の風力発電は2001年以降も順調な伸びを示しています. 2003年における国別の導入量ではドイツ14,610MW,スペイン6,420MW,アメリカ6,360MW,デンマーク3,080MW,インド2,130MWと続き,日本は第9位にランクされています. 日本では1998年に電力会社において「事業用風力発電に対する長期購入メニュー」が導入されました.また,2001年6月「総合資源エネルギー調査会」において,2010年の風力発電導入目標が従来の30万kW(300MW)から300万kW(3,000MW)に上方修正されました. また,2002年に日本でも電力会社へ新エネルギー等による発電を割り当てる「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)が施行されました. このような追い風を受けて国内の風力発電は急成長中であり,2005年末時点で924基,約92.7万kW(927MW)分の風力発電所が全国で稼動しています.しかし,電力需要に占める風力発電の比率は約0.1%と小さく,まだまだ拡大の余地があります. 一方,現実には新エネ導入目標に対して経過調整率などのファクターを考慮していることや電力会社が系統安定化のため風力発電の導入量に対する制限を設けていることなどから,2010年時点で目標の3,000MWを達成することは決して容易ではありません.(出典:http://www.nedo.go.jp/nedata/16fy/03/a/0003a001.html)日本における風力発電導入量の推移(2005年3月末) 設置基数 総設備容量(kW)1989 9 1,2151990 9 1,0151991 14 2,5411992 23 3,4741993 33 4,9731994 44 7,5801995 54 10,4211996 66 13,7121997 89 21,5381998 127 37,8221999 198 82,6372000 259 143,7442001 454 312,7572002 578 464,2102003 742 680,6652004 924 926,5752004年度総設備容量:約92.7万kW(924基)(出典:NEDO技術開発機構http://www.nedo.go.jp/enetai/other/fuuryoku/suii_graph.pdf) 地域別にみると風況の良好な北海道,東北,九州地方に集中しており,これらの地域で全体の80%を占めています.地域別風力発電導入量(2005年3月末) 全国比(%)北海道地区 18.4%東北地区 39.6%関東地区 8.0%中部地区 6.9%近畿地区 1.7%中国地区 1.9%四国地区 1.9%九州地区 20.3%(出典:NEDO技術開発機構http://www.nedo.go.jp/enetai/other/fuuryoku/todoufuken_graph.pdf)都道府県別風力発電導入量(上位7県,2005年3月末) 設備容量(kW) 設置基数青森県 177,525.0 136北海道 170,085.0 196秋田県 94,150.0 83沖縄県 83,705.0 72岩手県 67,570.0 62長崎県 33,430.0 43 愛知県 28,046.5 20(出典:NEDO技術開発機構http://www.nedo.go.jp/enetai/other/fuuryoku/todoufuken_ichiran.pdf) ところで,日本に導入されている風力発電設備は海外製が多く,導入される設備規模も大型化しており,近年では1500kW〜2000kWクラスの導入が進んでいます.海外機と国産機の導入基数の推移 海外機 国産機 国産化率(%)1989 0 9 1001990 0 9 1001991 0 14 1001992 2 21 911993 5 28 851994 7 37 841995 16 38 701996 23 43 651997 40 49 55 1998 72 55 421999 136 62 312000 193 66 252001 368 66 15 2002 499 77 132003 636 106 142004 746 178 19(出典:NEDO技術開発機構http://www.nedo.go.jp/enetai/other/fuuryoku/kaigaikokusan_graph.pdf) 風力発電設備の大型化が反映され建設コストも年々低減してきていますが,平均値でみると単機〜中規模導入で280千円/kW〜390千円/kW,大規模導入で190千円/kWとなっています.この数値は諸外国の実績値(主要国の平均)約130千円/kW比較するとまだまだ割高です.(出典:http://www.nedo.go.jp/nedata/16fy/03/a/0003a001.html) 欧米の風力開発地域と比較すると日本は地形条件が複雑な他,雷や台風など特殊な気象条件下にあると言えます.このような日本特有の諸条件は風力発電に対する影響要因となります. 一方,日本のインフラ(系統連系)や立地条件などの社会環境条件としては,日本の電力系統は欧州のように近隣諸国との大きな連系がなくかつ地形条件から単一の系統で変動の大きな風力発電を吸収するにも限界があります. 欧米との様々な違いを無視した単なる実績の比較で現状を悲観するのではなく,どのような手順で日本の特性を考慮した風力発電の導入を推進するか,を考えた上で将来の展開に取り組む必要があると感じています. |